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夢を観た。あなたと歩く夢。

階段を上がり廃墟へ歩く僕達。

その手はそっと、僕の手を掴んだ。

何処へ向かっているのか

僕の問いにあなたは答える

行きたい所があるんだ。ついておいで、と。

沢山の階段。沢山の坂道。

暖かな日差しの中、それでも僕達は寄り添っていた。

手を離さず、肩が触れ合い、見詰め合い、微笑むあなた。

黒いマントを翻し、僕を観るあなたに抱き寄せられた昼下がり。

あなたが作る影が僕を幻想の世界へと誘った。

いい香りがする。これはきっとあなたの香り。

同じように僕の香りも、嗅いで欲しいと少し思った。

切ない。あなたが笑う。

僕の首筋に、あなたは鼻先をやり、唇を肌に押し当て、僕の香りを嗅ぐ。

締め付けられる僕の身体。倒れてしまいそうだよ。

あなたの香りがする。吐息混じりにあなたは囁く。

僕の首筋に当てられたその唇が、僕の身体に火をつけ始める。

僕の香りってどんな風?きっとあなたの香りと似ていて欲しい。

あなたに抱きしめられていた事が、夢でないという証拠に。

ああ、それとも僕の香りは毒になるのかな?あなたの好きな香りでありますように…。

僕は願い、祈る。

あなたはそっと唇をそこから遠ざけ、僕の腰に手を回すと、行こうかと囁きまた、僕の手を掴んだ。

辺りを見回しながら、熱くなった身体をあなたにゆだね、歩く僕はまるで熱病に掛かってしまった子供のようだったろう。

あなたという熱病。付ける薬はあなたの体液。

僕の思考が勝手に独り歩きし始めた頃、あなたは突然歩みを止めた。

行き着いた先は、あなたの大切な場所だった。

こんな所にこんな場所が在ったなんて、あなたが居なければ気付く事も無かったろう。

でも、あなたに似合わない子供じみたこの場所は、寂しい事に僕達を受け入れる事は無かった。

僕が一緒に居たせいなの?

僕は上目遣いにあなたに問うてみる。

そんな事、有る訳が無いさ。御免ね、ただ今日は駄目みたいだ。見せたかったのに…

あなたは困った、そして淋しそうな眼を僕に向け呟く。

気にしないで。あなたが僕をここに連れてきたいと、僕にこの大切な場所を見せたいと、思ってくれただけで僕は幸せなのだから。

あなたは、再び僕の手を取る。片方の口角を優しく引き上げ微笑んでくれる。

行こう。ここだけじゃないんだ。君を連れて行ってあげる。ほら、手を繋いで?迷子にならないように。

あなたの体温が僕の手を包む時。

僕は果てる。

あなたはそれに気付いているのかな?

何度も何度も僕の手の平をくすぐるあなたの指。

しっかりと掴んで、互いの体温と同化し始める。

夢中になって歩き続ける僕達。

見慣れない道。見慣れない顔。見慣れない風景。

小走りに階段を上がり、坂を下り、僕の息は上がってしまったよ。

待って、ねぇ、待って・・・。

あなたは少しだけ歩みを遅め、僕の眼を見つめ始める。

君と居れて、俺は幸せだよ。

僕はそれ以上に幸せだよ。

手を離さないで。不安になってしまうから。

この世界は僕の世界ではなく、あなたの世界だから、きっとあなたが僕の手を放したその瞬間、離れ離れになってしまうから。

だから、もう少しだけそうしていて?大好きだよ。あなたが。

さぁ、行こう。俺が誘ってあげるから。ここは俺の青の世界さ。君だけを連れて行くよ。だから、ほらちゃんと手を取って、ついておいで?

唇が重なる。

僕たちの視界は青に染まった。







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