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それを知ったのは、まだ私が幼い子供の頃だった。

両親を早くに亡くした私を育ててくれた祖母が買ってくれたウサギのヌイグルミを肌身離さず抱き締めていた頃の話。

私を膝に乗せ、祖母は優しくこころに響く声で良く語ってくれた。

【人にはね、誰でも心があるものだよ。お前にもお祖母ちゃんにもね。例え、誰かを殺めてしまった人にもね。】

【神様ってのは不思議なお人でね。心無くしては人に在らずって事を少しだけ私達に教えてくれるんだよ。】

【けれどね、お前。良くお聞き。誰にでも心は在るのだけれど、それを開く鍵を持っているかどうか、それは分からないんだよ。】

【生まれながらに鍵を持っていたのは、神様だけなんだね、きっと。】

【生まれながらに鍵を持たない者達は、こうして生きている間、ずっとその鍵を探して行くんだよ。】

【お祖母ちゃんは、その鍵を見つけたの?】

【私かい?さぁ、どうだろうねぇ。でも、お前のパパとママが死んで、乳飲み子だったお前をこの腕に抱いた時、お祖母ちゃんは思ったんだよ。お前が私の心の鍵を外してくれるだろうってね。だから、お祖母ちゃんにとってお前が心の鍵なんだよ。】

【なぁんだ、私に貸して貰おうと思ったのに。残念。】

【ふふふふ…大きくなったら、お前にも分かるね。心の鍵がなんなのか。】


それから十数年が過ぎ、私は成人した。

祖母はこの春、天に召され、私の手元には祖母の残した少しの遺産とあの時のウサギのヌイグルミが残った。

白かったウサギは薄汚れ、手触りの良かった毛足は所々抜け落ちている。

それでも、私には大切な心の拠り所になっていた。

一人で古びた木造の家に住む私にとって、このウサギだけが唯一無二の物だった。

友も無く、毎日を田畑で過ごし季節毎の贈り物で私の生活は成り立っていた。

夜になれば、小さな家の前にあるこれまた小さな橋の上に座り、薄汚れたウサギのヌイグルミとともに夜空を見上げていた。

【綺麗な星だね。】

ウサギは口元に微笑を乗せているだけで、答えてはくれない。


けれども、ある夜ふと思ったのだ。

【私にはもっとなにかあるのではないか】と。

生まれてすぐに両親を亡くし、祖母に育てられ、友人といえばこの薄汚れてしまったヌイグルミだけ。

目の前にある橋を越えてみたらどうだろう?と。

あの橋を越え、川を越え、森を歩き、この両足で何かを、そう、おばあちゃんの言っていた心の鍵を捜しに行こうと。


早朝に簡単な荷物を纏めた私は、まだ見ぬ路に心躍らせながら橋の上を歩く。

橋の上から見るおばあちゃんと暮らした家は、まるで私の旅路を明るく照らすかのように朝日に照らされていた。

【行ってきます、おばあちゃんが私に鍵を見出した様に、私にも鍵が見つかりますように見守っていてね。】

そう呟く私の腕の中で薄汚れたウサギが風に揺れていた。





×END×



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★後書き★

これは・うさぎ・自分自身・カギ・橋という、4つのキーワードを使用して作る心理テストなのですが・うさぎが恋人(好きな人)・カギが愛情・橋が人生・自分自身は、あなた自身、そのままを、あらわしています。なかなか興味深い結果になっていると思わる。

最後、どうしようかと迷ってしまった。これだから小説描きにはなれないのだ。へんに長くなってるし…
ちなみにこのウサギ、顔は【ベルセルク】に出て来るファルネーゼが持っているウサギのヌイグルミがモデルです。って、誰もわかんない話を…(爆笑)。

2005/6/4乱。





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